ハイエンドギターのリセールバリューは本当に高いのか

コラム

新潟でPAエンジニアとギター講師をやっている川村です。
Suhrを10年、Tom Andersonを5年使っていて、過去に何本かギターを手放してきました。

「ハイエンドギターは値段が落ちにくいから、実質的なコスパがいい」。
ギター好きの間では定番のフレーズですよね。
自分もこの言葉を信じて高い買い物をしてきた一人です。

でも、実際に売ってみると「思ったより戻ってきた」こともあれば、「え、この値段?」と落ち込んだこともある。
つまり、リセールバリューが高いかどうかは一概には言えなくて、ブランド・モデル・状態・タイミング、いろんな条件で変わってきます。

この記事では、自分が実際にギターを買って売ってきた経験と、中古相場のデータをもとに、ハイエンドギターのリセールバリューについて正直に書いてみます。
購入を迷っている人の判断材料になれば幸いです。

そもそも「リセールバリューが高い」とは

リセールバリューとは、買った値段に対して売るときにどれくらい回収できるか、という比率の話です。

車で言えば「3年落ちでも購入価格の70%で売れるリセール優良車」みたいな概念ですね。
ギターの場合、明確な基準はありませんが、目安としてはこんな感じです。

  • 購入価格の65〜70%以上で売却:かなり優秀
  • 購入価格の50〜65%で売却:良好
  • 購入価格の50%以下:普通〜やや厳しい

たとえば30万円で買ったSuhrが20万円で売れたら、「10万円で数年間ハイエンドギターを楽しめた」という計算になります。
月額に換算すると、3年使って月2,800円くらい。
こう考えると、レンタルより安い。

ただ、ここで注意したいのは「いつ買ったか」で話がまったく変わるということです。
ここ数年、ギターの中古相場はかなり動いています。

東京新聞の報道によると、コロナ禍前と比べて中古ギターの価格は3〜4割上がっているそうです。
自分の体感とも一致していて、4年前にデジマートで見ていた価格帯から明らかに上がっています。
具体的な例を挙げると、Fenderのアメリカンスタンダードが2010年代前半に新品12〜13万円だったのが、いま中古で20〜25万円で取引されています。
新品定価を中古が上回る「逆転現象」まで起きている状況です。

価格高騰の背景

なぜこんなに中古ギターが値上がりしているのか。
主な理由は4つあります。

  • 円安の進行(1ドル80円台から150円前後へ。輸入コストがほぼ倍)
  • コロナ禍で工場が止まり、新品の供給が追いつかなくなった
  • 海外バイヤーが日本の中古市場を買い漁っている(状態が良いので人気)
  • YouTubeやSNSで特定モデルが話題になると相場が跳ねる

特に円安の影響は大きいです。
Suhrの新品なんて、いま普通に75万〜115万円しますからね。
自分が10年前にSuhr Standardを買ったときは45万円くらいだったので、倍以上です。
もう同じギターを新品では買えない。

この状況下では、過去に買ったハイエンドギターの中古価値が「相対的に」上がるのは当然です。
ただ、これは「ギターそのものの価値が上がった」というより「新品が高くなりすぎて中古に需要が流れた」という構造です。
そこは冷静に見ておいた方がいい。

加えて、海外のヴィンテージギター市場は2025年時点で6億2,000万ドル以上の規模があり、年間約4.26%で成長しているというデータもあります。
グローバルでギターの資産価値が認められつつある流れは確かにあります。

ブランド別リセールバリューの傾向

値落ちしにくいブランド

すべてのハイエンドギターが同じようにリセールバリューが高いわけではないです。
実際に値崩れしにくいのは、以下のようなブランドです。

ブランド傾向
Fender(USAおよびCustom Shop)定番モデルは常に需要がある。特にストラト・テレキャスは回転が早い
Gibson(Custom Shop含む)レスポール・SGは鉄板。ヴィンテージは別格の値付け
PRSCustom 24が中核。ジャンルを問わない汎用性の高さが人気の理由
Suhrコンポーネント系の代表格。認定証(COA)付きなら高値維持
Tom AndersonSuhrと並ぶハイエンド。流通量が少ない分、中古に出ると動きが早い

共通しているのは「ブランドの知名度が高い」「定番モデルがある」「欲しい人が常にいる」の3点です。
結局、中古市場は需要と供給で価格が決まります。
「誰もが知っていて、買いたい人が多いギター」は売りやすいし、値も付きやすい。

逆に言えば、どんなに品質が高くても、知名度のないブランドのギターは中古市場で苦戦しがちです。
ここがギターと車の類似点で、「トヨタのリセールが強い」のと同じ構造ですね。

意外と値落ちするケース

逆に、ハイエンドなのに中古で苦戦するパターンもあります。

  • 個人工房のフルオーダー品(注文者の好みが強すぎて汎用性が低い)
  • マニアックなブランドの高額モデル(知名度がないと買い手が見つからない)
  • 大幅な改造済みギター(ボディ加工、ピックアップ交換、フロイドローズ後付けなど)

自分の経験で言うと、知人が某工房で50万円かけてフルオーダーしたギターを売ろうとして、20万円の査定にがっかりしていました。
スペック的には素晴らしいのですが、「その仕様を欲しい人」がピンポイントで現れないと厳しいんですよね。

あとは意外かもしれませんが、ボディ塗装をリフィニッシュしたギターも評価が下がります。
オリジナルの塗装が残っているかどうかは、中古査定でかなり見られるポイントです。

リセールバリューを左右する要因

ブランド以外にも、売却価格に大きく影響する要因があります。
自分が何本か売ってきた経験から、特に差が出るポイントをまとめます。

  • 付属品の有無(純正ハードケース、保証書、COAの有無で数万円変わる)
  • ネックの状態(トラスロッドの余裕がないと大幅減額。最重要チェックポイント)
  • フレットの残り(消耗が激しいとリフレット費用分を引かれる)
  • オリジナル状態かどうか(ノーマルが最強。パーツ交換は基本マイナス)
  • 外観の状態(傷よりも、タバコやペット臭の方が嫌がられる傾向あり)

個人的に一番驚いたのは、COA(認定証)の有無でSuhrの査定が3〜5万円変わったことです。
買ったときは「ただの紙じゃん」と思っていましたが、売るときにその紙が万札に化けます。
ハイエンドギターを買ったら、箱・ケース・書類は全部まとめて保管しておくのが鉄則です。

もう一つ付け加えると、ギターの「弾き込み具合」は必ずしもマイナスではないです。
適度に弾き込まれた木材は鳴りが良くなるので、プレイヤーズコンディションとして好む人もいます。
ただし、ネックのコンディションが悪いのは別問題。
トラスロッドが限界まで回っているとか、ネックにねじれが出ているとか、そういう構造的な問題は大幅減額の原因になります。

どこで売るかで手取りは変わる

同じギターでも、売り方によって手取りはかなり違います。

売却方法メリットデメリット
楽器店買取(島村楽器、イシバシ等)即金、手間なし販売価格の60〜70%が上限
デジマート委託販売専門店の信頼で高値がつきやすい売れるまで時間がかかる場合あり
ヤフオクオークション形式で相場以上に伸びることも安値スタートのリスク、梱包の手間
メルカリ自分で価格設定できる手数料10%+送料負担、楽器に詳しくない購入者とのトラブルリスク

ハイエンドギターの場合、デジマートの委託販売か、楽器店への直接買取が無難です。
メルカリは手軽ですが、手数料10%と送料(ギターだと2,000〜3,000円)を引くと、楽器店買取とあまり変わらないことが多い。
しかも梱包の手間と破損リスクを考えると、個人的にはハイエンドをフリマアプリで売る気にはなれないです。

自分はSuhrを1本、イシバシ楽器の買取に出したことがあります。
ネット査定で概算を聞いてから店頭に持ち込みましたが、COA付き・フルノーマル・フレット8割残りで、購入価格の約65%で買い取ってもらえました。
ハイエンドとしては悪くない数字です。

一方、ヤフオクはリスクもありますが、人気モデルだと相場以上に伸びることがあります。
PRS Custom 24の限定カラーをヤフオクに出した知人は、楽器店査定より5万円高く落札されたと言っていました。
ただしこれは運の要素も大きいので、確実に手放したいなら店頭買取の方が精神的に楽です。

投資目的でギターを買うのはアリか

最近「ギターは資産になる」という話を見かけますが、自分はこれには懐疑的です。

確かに、三木楽器のヴィンテージ価格推移データを見ると、1954年製Fender Stratocasterが1998年の200万円から2021年には840万円になっています。
Martin D-28の1940年製も、同期間で300万円から900万円に。
すごい数字ですが、これはあくまで数十年前に作られたヴィンテージの話です。

現行のハイエンドギターが同じカーブで値上がりするかは、正直わかりません。
円安と供給不足が解消されれば、今の高騰が落ち着く可能性もあります。
為替が円高に振れたら、新品価格が下がって中古の需要が減る可能性だってある。

自分のスタンスとしては、「投資目的でギターを買うのはやめた方がいい」です。
ギターは弾いてナンボの道具なので、「弾き倒して、飽きたら売る。そのときにある程度戻ってくればラッキー」くらいの感覚が健全だと思っています。
リセールバリューのために弾かずに保管しておくのは、本末転倒ですからね。
音楽をやる人間として、それはちょっと寂しい。

購入時に意識しておくとリセールで有利になること

リセールバリューの観点から逆算すると、購入時に気をつけるべきポイントが見えてきます。

  • 定番ブランドの定番モデルを選ぶ(迷ったらFender、Gibson、PRS、Suhrあたりが堅い)
  • 限定カラーや限定仕様はリセールで有利になりやすい
  • 購入時の付属品(ケース、COA、保証書、タグ)は絶対に捨てない
  • 改造はしない。どうしてもやるなら、オリジナルパーツを保管しておく
  • 購入店のレシートや納品書も保管しておく(正規品の証明になる)

「将来売るかもしれない」と意識するだけで、保管の仕方が変わります。
ギターを壁に掛けっぱなしにするのは見た目はカッコいいですが、直射日光や温度変化でネックに負担がかかるので、使わないときはケースに入れておく方がいい。
これはリセール以前に、ギターを長持ちさせるための基本でもありますが。

新潟でハイエンドギターを探している人へ

自分は新潟に住んでいるので、地方でハイエンドギターを買う難しさはよく分かります。
東京や大阪の大型店に行けば選択肢は山ほどありますが、交通費と時間を考えるとそう頻繁には行けない。

ただ、最近は新潟県内でもハイエンドギターを試奏できる環境が整ってきています。
新潟でハイエンドギターを購入する際のおすすめ情報をまとめた記事を見つけたのですが、県内の取扱ブランドや試奏設備がよく整理されていて参考になりました。

地方在住のギタリストにとって、近場で実物を触れる環境があるのはありがたいことです。
ネット通販で買うのも一つの手ですが、ハイエンドは特に「弾いてみないと分からない」個体差があるので、できれば実物を確認してから買いたいところです。

まとめ

ハイエンドギターのリセールバリューは、条件が揃えば確かに高いです。
ただし「ハイエンドなら何でもOK」ではなく、ブランド知名度・モデルの人気・状態・付属品といった要因が組み合わさって初めて成立します。

自分がこれまでの売買で学んだことをまとめます。

  • 定番ブランドの定番モデルは強い。迷ったらそこを選べば間違いは少ない
  • COAと付属品は絶対に保管しておく。売るときに数万円の差になる
  • 改造はリセールを下げる最大の要因。やるならオリジナルパーツを残す
  • 売却先は複数比較する。楽器店買取とオークション、両方の相場を見てから判断する
  • 「投資」ではなく「楽しんだ結果、ある程度戻ってくる」くらいの感覚がちょうどいい

高い買い物だからこそ、「弾いて楽しんで、最終的にある程度回収できる」という安心感は大きいです。
自分はこのスタンスのおかげで、気負わずに新しいギターを試せるようになりました。
これからハイエンドギターの購入を検討している方の参考になれば嬉しいです。